ビデキンちゃんが行く ~NAB2017 VITECグループ編~
最後は三脚や照明など総合的に扱っているVITECグループのブースを見てみましょう。カメラが小型軽量化するにつれ三脚も小型化していきますが、ドローンが出てきてから状況が少し変わってきたように思います。ドローン自体もそうですが、その派生技術としてジンバルを利用したカメラサポートシステムが出てきたことが大きいと思います。
ドローンのメーカーというとDjiさんが有名ですが、つい最近まで大小さまざまなメーカーがドローンを作っていてGoProのような超小型カメラからREDのようなカメラまで様々なカメラに対応したカメラサポートシステムが出てます。最近こうしたメーカーも淘汰されて少しづつ少なくなってきているようですね。
ビデオなど動画を撮影する場合三脚は必須アイテムといえますが、視点を固定した撮影よりステディカムのように動的に被写体を追える撮影スタイルが主流となりつつあるみたいです。三脚メーカーさんも色々工夫していてジンバルやクレーンやスマホ用のものとか様々な形態のカメラサポートシステムを手掛けるようになってきました。ただ三脚の機構部分が変わることはほとんどなかったんですが、今回のNABでManfrottoさんからカウンターバランスに窒素充填のシリンダーを採用したManfrotto Nitrotech N8モデルが発表されました。耐荷重8kgまでとなってますが、このクラスのヘッドとしては軽量化されているそうです。
最近の照明はすべてといっていいほどLEDになっていますがLED素子を沢山ならべたフラットパネルタイプのものが多いです。LED素子単体の光量があまり大きく取れなかったのが原因のようですが、最近はパワーLEDといって1つのLED素子でも大きな光量が出せるものが出てきたのでLEDのスポットライトも増えてきました。LEDのいいところは消費電力が少ないのと熱くならないというところでしょう。でも、まったく発熱しないわけではありません。大きなパネルだったりスポットライトタイプの照明ではファンで冷やしたり、ファンがない場合は放熱器がついていて結構それが重かったりします。今回LitepanelsさんからフラットパネルタイプのASTRAとスポットライトタイプのSOLAのラインナップが出展されていました。
Sachtlerからも三脚の新製品がでていました。小型ビデオカメラ用の三脚ですね。 VITECグループには三脚のブランドがすごく多くてほかにもOConnorやGITZOなどがあります。こんなにたくさんの三脚メーカーを傘下にいれてどうするんだろうって思ってましたが、今回のNABでなんとなく棲み分けが見えてきたように思います。Sachtlerは今回新製品として出展したFSB10をみるとわかる通りSachtlerさんらしい伝統的なデザインのものでほかのラインナップも同じです。Vintenはスタジオペデスタル、OConnorは映画系、GITZOは写真用、Manfrottoは写真とビデオの三脚で常に新しい技術やデザインを取り入れている。SachtlerとVintenはENG三脚ではいまだ結構かぶってますけどね。
Vintenさんは三脚やペデスタル中心でしたが電動雲台を新製品として出展していました。電動雲台というと日本では監視カメラとかお天気カメラ用って思う人が多いと思いますが、スタジオやイベント会場とかで使うことを想定した製品です。NABでもいくつものメーカーがPTZ(Pan Tilt Zoom)って言い方をしていて監視目的のものとはちょっと区別しているみたいです。Vintenさんは自走式のペデスタルを以前からやっていて今年も出展していたんですが、それの延長線にあるような感じです。
おじさまがいうにはそれだけ放送局、特に地方局は大変なんじゃないかって。地方局はおもに地元のローカルな情報を扱うことが多いですが、こういうのってネットやSNSが一般的になってきた今かなり厳しい状況になっているそうで。人件費や機材、ランニングコストを極力減らしたいという状況を反映した製品ってことだそうです。そういえば海外の放送局で取材のカメラを全部iPhoneにして話題になりましたが、こういうことだったんでしょうかね。PTZを導入すればカメラマンの数は減らせるし、プリセットしたところをタッチパネルとかで指定するようにすれば誰でも操作できるし。ニューススタジオとかで常にキャスターの場所が決まっているような定型の場合は導入の価値ありってことでしょうね。
さて、日本でもこうした省力化は進むのでしょうか。結婚式場やイベントホールなどでは以前から導入されていましたが、あまり積極的な運用はされていなかったように思います。ただ、コンピュータやタブレット端末と組み合わて運用するのが普通になってきましたので、顔認識やオートトラッキングなんかと組み合わて自動的に被写体の動きに追従するとか音楽やジェスチャーを認識してスームするなんて自動化が始まるのかもしれませんね。
ビデキンちゃんが行く ~NAB2017 キヤノン編~
昨年キヤノンさんはEOS C700を発表しましたが、今年はそのPLマウントバージョンが7月発売の新製品として出品されていました。レンズ関係ではUHD対応のDIGISUPER 27(UJ27×6.5B ISS)と2/3インチ高倍率ズームレンズHJ40e×10BおよびHJ40e×14B、10月発売のデジタルシネマ系のズームレンズCN-E70-200mm T4.4があります。キヤノンさんは今年創立80周年を迎えてるんで個人的にはXAかXFシリーズの新機種発表を期待してたんですけどね。
現状ではXCシリーズが最初から4K対応で、XAとFXは4K対応の機種が今のところないので、いずれ出てくるとは思いますが、キヤノンさんは2020年には今とはまったく違う新しいキヤノンへと生まれ変わるって言ってますので、カメラやレンズがどういう方向に向かうのか期待したいですね。商業印刷やネットワークカメラ、ヘルスケア、有機ELや半導体のための産業機器に力を入れていくみたいなので、その絡みでなにか新しいコンセプトの製品が出るのかも。
さて、それでは新製品から順番に見ていきましょう。まずはEOS C700 GS PLです。昨年EFマウントのC700と同時に発表されたんですが、PLマウントのモデルだけ発売が延期になっていました。PLマウントのレンズも最近はレンズ情報をやり取りするための電気接点(インターフェース)が装備されているのが主流となりつつあるんですが、いくつかメーカーによって接点やコネクター、データーのやり取りの方式が違っていて、そこらへんの調整に時間がかかったみたいです。ちなみにEOS C700 GS PLが採用しているのはCookeというシネレンズのメーカーのi Technologyというものを採用しています。キヤノンさんのレンズでもCN7×17 KAS S/P1やCN20×50 IAS H/P1がこのi Technologyを採用しているのでその流れなんでしょうね。
デジタルシネマというと単焦点レンズでズームレンズはちょっと特殊という感じだったんですが、最近ではズームレンズも普通に使われるようになってきたようです。カメラも小型軽量になったりして撮影スタイルも従来とは違ってビデオ的な方式で撮影する現場も多いようです。レンズもこうした撮影スタイルやカメラの小型軽量化にマッチした製品が出てきています。今回新製品のCN-E70-200mm T4.4もそうしたコンセプトを元に開発されていて、オプションの専用グリップZSG-C10を装着するとENGレンズのように使うことができるようになっています。EFマウントということもあるんですが、デュアルピクセルCMOS AFによるオートフォーカスにも対応しています。ただ、カメラは対応機種として現状はEOS C300 MarkIIとEOS C100 MarkII、EOS C700の3機種のみとなっています。シネ系のレンズなので周辺光量補正や倍率色収差補正といったメタデーター対応です。
4K8K放送も目前になりすでに試験放送なども盛んに行われています。放送の場合デジタルシネマと違ってスタジオや中継ではセンサーサイズが2/3インチのカメラを使うのが一般的な流れになっているようで、対応レンズがキヤノンさんだけでなくフジノンさんからも出ています。今回キヤノンさんが出展した新製品のレンズDIGISUPER 27は主にスタジオでの使用を目的として開発されたレンズで、6.5mmからの27倍ズームとなっています。スタジオで使う場合中継と違って近くも撮影しなくてはならないので、最短撮影距離は0.6mになっています。ちなみに中継とかの用途の高倍率ズームDIGISUPER 86やDIGISUPER 90は3mです。ほかにもスタジオ用なので、バーチャルスタジオで必要になるエンコーダー出力に対応していたり、ズームサーボ機構の静粛性などの特徴を備えています。
キヤノンさんはレンズやカメラだけでなくて最近はモニターも開発しています。今回のNABでもHDR対応の4KモニターDP-V2420やDP-V1710を新製品として出展していました。あと、参考出展の高輝度HDRモニターもありました。4K8Kとなるとモニターはピントの確認やプレビューなどの必要性から、撮影現場でもある程度のサイズが求められるようになったり、各種ガンマへの対応が必要だったりするので、おのずと新製品が登場したり、すでに発売した製品でもバージョンアップで対応したりで、目が離せない製品の一つといえそうです。
カメラが新機種に変わってもレンズはそのまま使い回しできるっていうのがSDのころは一般的だったように思いますが、4K8Kの時代になるとイメージサイズは違うわ撮影スタイルは多様化するわでホントに沢山のレンズが出てきましたね。特にイメージサイズの違いは致命的で多少ボケるとかではなくてまったく写らない部分が出てきてしまいます。マウントも種類の分類もできないし、ほんとめんどくさい。でも、高価なレンズから安価なレンズまで選択の幅は確実に広がりました。うまく選択すればきっとピッタリのレンズを見つけることができると思います。
ビデキンちゃんが行く ~NAB2017 ブラックマジックデザイン編~
毎年NABでたくさんの新製品を発表しているブラックマジックデザインさん今年も色々な新製品を発表していました。なかでもDaVinci Resolve 14が大きな目玉といえるのではないでしょうか。
昨年Ultimatte社と共に傘下にいれたFairlight社のDAWがDaVinci Resolve 14にビルトインされてカラーコレクションやビデオ編集のほかにDAWの作業ができるようになりました。色々な機能が詰め込まれると使いにくくなりそうですが、ツールバーのところで、それぞれの機能を切り替え使えるようになっているので、そんなことはなさそうです。オーディオのコンソールはFairlightのころからのものでチャンネル数バリエーションで4機種用意されています。今回カラコレで使うコンソールもコンパクトなものが2機種新製品としてでています。トラックボールのある部分はほぼ同じで、ディスプレーがあるのがDaVinci Resolve Mini Panelで、ないのがDaVinci Resolve Micro PanelでこっちはUSBバスパワーでACとか外部電源を必要としません。トラックボールなどの作りは上位機種のDaVinci Resolve Advanced Panelと同様でしっかりしていますし、操作性もいいです。ちなみにDaVinci Resolve 14のパブリックベータ版が公開されていますので、興味のある方実際につかってみてはいかがでしょうか。
https://www.blackmagicdesign.com/jp/products/davinciresolve
スイッチャーもATEM Television Studio Pro HDとATEM Television Studio HDの2つの新製品があります。ブラックマジックデザインさんのATEM スイッチャーは本体とコントローラーがセパレートになっていましたが、今回発表されたライブプロダクションスイッチャーATEM Television Studio Pro HDはオールインワンになっていて、電源もACアダプターなしで使うことができます。DC駆動も可能になっていて車載もできますね。HDのスイッチャーですがSDにも対応していて、SDI×4とHDMI×4の合計8入力が可能です。小さいですが出力画像や音声のレベル表示ができるようにもなっています。トラックボールも採用されていて全体的によくできていますが、フェーダーがTバーじゃないのがちょっと残念かも。ATEM Television Studio HDのほうはATEM Television Studio Pro HDとできることは基本的に同じですが、1Uラックマウント2/3サイズでかなりコンパクトにできていますね。2/3ってなんか半端なきがしますが、Teranexのコンバーターサイズの機器を横に並べるとちょうど1Uのラックマウントサイズになるようになっています。HyperDeck Studio Miniで収録したり Teranex Mini Optical Fiberで画像を長距離伝送するなどこの1/3のスペースって結構利用価値ありそうですね。
UltraStudio HD Miniを発表されました。これはThunderbolt 3搭載のキャプチャー&再生ソリューションで、3G-SDI、HDMI、アナログインターフェース対応で、1080p60および2K DCIまでの10-bitでの収録が可能となっています。
新製品としてはこんな感じでしょうか。ほかにはアップデートがいくつかあるので、紹介しましょう。
URSA Miniですが、今回B4マウントとFマウントのオプションが追加されました。ブースでは箱型のレンズと組み合わせて結構目立ってましたね。B4マウントアダプターは光学系が内蔵されていないので センサーの中央部分を使うことになりHD解像度での収録に限られそうです。また、URSA Mini ProがBluetoothリモートカメラコントロールに対応しました。iPadからアイリスや色温度、シャッター、Recなどのコントロールができます。URSA Mini Proのメモリー残量なども表示できるので、かなり便利ですね。URSA Mini ProのBluetooth対応APIおよびサンプルコードを含むCamera 4.4アップデートは6月に無償でダウンロードできるようになるそうです。
ほかにもアップデートとしてVideo Assist 2.4アップデートが発表されています。日本語を含む10カ国に対応したほか、波形、RGBパレード、ベクトルスコープ、ヒストグラムなどのスコープをフルスクリーン表示に対応したそうです。もう一つアップデートとしてBlackmagic Duplicator 1.1アップデートにより、Blackmagic Duplicator 4KがリアルタイムH.264エンコーディングに対応したことが発表されています。現状ではH.265だと再生環境が限られてしまうので、汎用性の高いH.264での収録にも対応したそうです。
おじさまがいってましたが、ブラックマジックデザインさんってかつてのソニーのようだそうです。出差しは違いますが、ソニーはUマチックとカメラの組み合わせで放送業界に入り、1インチVTRやスイッチャー、編集機へと徐々に拡大していったそうです。その間いくつかのメーカーも傘下に入れたりしながら。ほかにもパナソニックさんやビクターさんも同じように進んで、業務用のビデオ機器でシステムを組めるようにしてきたとか。学校放送やイベントなどで使われるビデオ機器も以前はこうしたメーカーを含めていろんな製品がありましたが、最近はこの部分少し寂しくなってきました。ブラックマジックデザインがこうして機材の幅を広げて息の、はある意味いいタイミングなのかもしれませんね。
ビデキンちゃんが行く ~NAB2017 パナソニック編~
毎年少しずつブースの印象が違ってくるように思いますが、今年は特に組織が変わったので余計にそう思ってしまうのかもしれません。今までのAVCネットワークス社が組織改編されコネクティッドソリューションズ社 になったそうです。北米のほうもそれに伴って社名が変わったそうで、おじさま曰くパナソニックのプレスカンファレンスでもだいぶ人が入れ替わってしまっていたって言ってました。
さて、パナソニックさんといえばやはり気になるのはベールに包まれたVARICAMなんですが、ほんとコレ情報がないんですよ。Cine Gear Expoである程度形になったものが出せるようなことをおっしゃっていましたので詳細は6月までお預けということになりそうです。
こういった形で発表するのってNABでは珍しいそうで、たぶんパナソニックさんでは初めてではないんでしょうか。組織改編の話は昨年からあったんですが、実際に社名変更になったのは4月に入ってからなので、ベールに包まれたこのカメラも急遽決まったように思います。モックどころかマウントもコーデックも正確なセンサーサイズも何も公表されていないんですから。
毎年のように新製品があるということもありますが、パナソニックさんはここ数年VARICAMシリーズを大きく取り上げていて今年もCODEX社とVARICAM35のカメラヘッドを組み合わせたVARICAM PUREを新製品として出品していました。すでに昨年のIBCで発表されていたものです。VARICAM35はカメラモジュールAU-V35C1GとレコーディングモジュールAU-VREC1Gで構成されていたんですが、そのカメラ部分AU-V35C1GとCODEX社のAU-VCXRAW2を組み合わせたのがVARICAM PUREということなんですね。2年ほど前にもCODEX社のレコーダーとの組み合わせがありましたが、カメラモジュールAU-V35C1GとレコーディングモジュールAU-VREC1Gの後ろにV-RAW 2.0レコーダーAU-VREC1Gを装着する形式でした。なので、かなり全長が長くなってしまったんですが、VARICAM PUREは150mmも短くなってかなり小型になった印象です。
VARICAM35はカメラ部とレコーダーが分離できるモジュール構成になっているんですが、一体化したモデルがVARICAM LTといえますかね。今回Multi Dyne社のSilver Back 4K5と組み合わせて光ファイバーケーブルで中継カメラ的な使い方をしていました。本線や電源供給だけでなくリターンビデオやインカム、音声などの伝送が可能です。
VARICAMシリーズではないのですが例のベールに包まれたカメラのとなりにデジタル一眼のGH5がおかれていました。
新製品ということもあってハンズオンコーナーにも。カメラとしてはちょっと特殊ですが、4K対応のPOVCAMや360°ライブカメラAW-360C10、AW-HR140、屋外対応HDインテグレーテッドカメラAW-HR140、バルーンカメラなどユニークなカメラが増えてきたという印象でした。
カメラはほかにも4K対応の小型ビデオカメラAG-UX180やAG-UX90
カメラ関係以外にも12G-SDI対応ライブスイッチャーAV-HS8300やHD/10bitのパネルを搭載した16.5型LCDモニター、AV-HLC100
パナソニックさんも取材や中継、スタジオカメラはすでに一通りラインナップをそろえていて、今年はそれ以外のカメラの新製品が多かった感じです。もちろんHDRやIP伝送、クラウドを使ったニュース取材システムなども大きく取り上げていました。この3つは今回のNABの定番といってもいいでしょうね。池上通信機さんや日立国際さん、グラスバレーさんもこの3つは取り上げていました。日本の場合は海外と状況というか制作環境が違うので少し違うような気もしますが、日本にもIPはいつかくるトレンドといえそうです。映像の伝送となるとデーターの量が大きいので高速通信環境が必要になりますが、それ以前に利用料金や料金体系などもスマホやPCなどとは違ったものが必要に思いました。
ビデキンちゃんが行く ~NAB2017 ソニー編~
ハンディタイプのカメラからスタジオ・中継用のカメラまでソニーさんは一通りのラインナップをすでに揃えちゃった感じで、そうしたカメラを使って実際どうやって運用していくの?っていうところに重点を置いていたように思います。カメラ以外にもスイッチャーやスタジオ機器もすでに4K対応になっていますし。そこで、何が違うのかというとIPの規格が収束してきたことと、放送でのHDR規格が昨年の夏ごろに決まったことで、実際の運用に向けて機材の対応やシステムが新しくなるというところでしょう。HDRは以前からソニーさんは積極的でしたが、HDRってカラーグレーディングが前提になることが一般的なので、なかなか忙しい現場的にはムリだったのではないでしょうか。ソニーさんは今回グレーディングしなくてもいいようなソリューションを紹介していました。
さて、ソニーさんまだまだ盛りだくさんで紹介しきれない部分もあるんですが、そろそろ次のブースへと移ろうかと思います。HDRもIPも早くから手掛けていたこともあって製品だけでなくシステムとして完成したんじゃないかと思いますね。規格も決まりこれから各国の放送局に売り込みをかけるんでしょうか。おじさまがいうには早くから製品開発するとともに規格化にも力を入れてきた結果じゃないかと。VTRがなくなった現在はVTRのフォーマットで顧客を囲い込むことはできなくなったので、そのかわりの手段じゃないかっていってましたが、どうなんでしょうか?
ビデキンちゃんが行く ~NAB2017~
今年もいってきましたよラスベガスで開催されるNABに。いつもの年と違って今年は開催が遅いんですね。なので、昨年より気持ち暑い気がします。それでも初日は結構風が強くて乾燥していることもあるでしょうが、日陰は涼しくて心地良かったです。
そういえば昨年もそうだったんですが、入口に警備のスタッフと一緒に犬を連れた女性が立っていました。毎年通っているいつものおじさまに聞くとテロ対策だそうで、犬は爆弾とか危険物を察知するための警備のスタッフと一緒に行動しているそうです。日本でも2020年に開催されるオリンピックでこういった警備体制にするんでしょうかね。
会場を出入りするたびに見ていたんですが、いつもきっちりと警戒していました。昨年は警備のひとはいましたが、犬は時々いない時があったんですけどね。さて、こうした厳重な警備を通り抜け早速展示会場にはいってみましょう。
今年は昨年までとは違って初日は一通りすべてのブースをまんべんなく回ってめぼしい機材に目を付けておいて2日以降詳しく見て回ろうと思います。
ということで、最初はノースホールです。ここにはNHKが8Kを中心に出展していました。昨年は中継車なんかもあってかサウスホールの奥なのに人気のあったブースです。今年は少し人数が減った気がします。8Kってもうここでしか見られないわけではありませんし、それだけ一般的になってきたということでしょうか。
NHKがブースを構えるこの一角はFutures Parkというエリアになっていて韓国のUHDブースも出展しています。4Kに関してはすでに試験放送とか始めていて、関連する機器メーカーや4K対応の放送局なんかもかなりあるようです。圧縮や送信にかかわる技術的な出展などもあり、かなり積極的に推進している印象です。韓国にはLGとかサムソンといったメーカーがテレビの大きなシェアをもっているんですが、中国とか途上国も最近力を付けてきていて、価格的な競争では難しくなってきたという事情もあるようです。この点では日本が4K8Kに力を入れているのと同じような事情があるみたいです。
ノースホールにはほかにもVR Pavilionというコーナーがあって、ちょっと見た感じカメラとは思えないようなデザインの360°撮影カメラや360°撮影するために複数のカメラをセットするリグとか映像を見るためのゴーグルみたいなものが出展されています。小ぶりなブースが多いんですが、ユニークな機材が多くて見るだけでも楽しいです。
ノースホールにはRossさんやEvertzさんなど大きなブースを構えていますが、このへんはスルーしてセントラルホールに移ることにしましょう。まずはカメラメーカーを中心に見てみましょう。最初はパナソニックさんです。ちょっといつもとブースの感じが違うような気がしますが、AVCネットワークス社からコネクティッドソリューションズ社になり、社内の体制が変わったことに関係があるのでしょうか。パナソニックではVARICAMに力を入れているようで大きなスペースを割いています。VARICAMシリーズがアクリルケースに並べられているのですが、その末席にベールがかぶせられたカメラがありました。小型軽量で大判センサーを搭載したカメラだそうで、安価な記録メディアを採用していてワークフロー全体のコスト低減が実現できるそうです。もっぱらの噂ではGH5に使っているセンサーや画像処理を使ったVARICAMシリーズのローコストバージョンのカメラではないかとのこと。だとするとマウントはMFTでSDメモリー採用でしょうね。たぶん。
次ソニーさんですが、UMC-S3CAっていうちっこいカメラがでていました。このカメラはドローンにのせたりVRのようにたくさんのカメラを必要とする現場用のもので、記録系は内蔵されていますが画像を確認できるモニターは付いていません。レンズマウントはEマウントで、4Kのカメラとなっています。最大ISO 40960の感度をもっていて0.004 lxでも撮影かのというところがすごいかも。
JVCケンウッドは旧ビクターの流れであまりケンウッドの影響のある製品を表に出していませんでしたが、今回アンテナを装備した車が2台もブースに出ていました。カメラで撮影した映像をワイヤレスでこの車に伝送してネットなどに再送信するシステムです。ケンウッドは無線機など電波を扱う機器で定評のある会社なので、本領発揮というところでしょう。
そうそう、ARRIは今回ALEXA SXT Wという新たなモデルを出品していました。これもワイヤレスで映像やデーターを送信できるようになってます。
ざっとカメラメーカーを見てきましたが、ほとんどのメーカーは映像のワイヤレス伝送に対応したカメラを出しています。国内ではいまいちですが、海外ではカメラから直接映像をワイヤレスで伝送するのが当たり前になりつつあるようです。国内ではやらない理由の一つはキャリアの料金ではないでしょうか。もっと安い料金プランができるとか使ったときに使った分だけ払えるようなプランができるといいですね。カメラメーカーも独自に動いているようなんですが、自社の製品と絡めていたり、クラウドサービスと共に使うことを前提としていることが多いみたいです。
4Kが当たり前になってくるとIP化が進むでしょうから、その時がきっかけとなってワイヤレス伝送が普及するかもしれませんが、キャリアさんたちが映像伝送に関してもう少し関心をもってくれないとダメかもしれないです。このあたり既存のキャリアさん以外に映像伝送を専門とした会社とか出てきそうですね。
最近レンズメーカーから毎年のように新製品がでていますので、レンズ関係のブースを見てみましょう。レンズの流れとしては4K対応のB4マウントレンズとデジタルシネマ系のレンズがありますが、B4マウントのレンズはキヤノンとフジノンの2社がほぼ独占状態です。4K8Kの放送に関しては日本が中心に先鞭をきっているので当然なのかもしれませんが、元々B4マウントのレンズを手掛けているメーカーがこの2社とAngenieuxくらいしかなかったというのもあるでしょうね。今までのノウハウやカメラメーカーとのつながりとかあって新規参入が難しいようです。一方デジタルシネマ系のレンズは老舗だけでなく新規参入もあり、価格的にもまさにピンからキリまであります。
キヤノンは今回スーパー35mmセンサーサイズに対応した望遠系レンズとしてCN-E70-200mm T4.4 L IS KAS Sを発表しています。フジノンからは価格を抑えた新たなFUJINON MKシリーズとしてMK18-55mm T2.9とMK50-135mm T2.9が、トキナーはVistaシリーズとして4本の単焦点レンズがありましたが、今回25mmが加わりました。新規参入組といえるシグマはデジタルシネマ用レンズSIGMA CINE LENSシリーズを出展しています。海外メーカーではAngenieuxがOptimo Style 48-130 T3をZeissがCompact Prime Cp.3のレンズラインナップを発表しています。ZeissのCompact Prime Cp.3はCp.2と光学系はほぼ同じで、カメラとメタデータをやり取りするための電気接点やコネクターを備えています。ほかにもCookeやライカのほか中国系のレンズメーカーなんかもあって正直すべてをチェックしきれない感じです。
セントラルホールにはまだまだ見るべきところが沢山あります。どんどん行きましょう。毎年NABで新製品を発表するATOMOSは今年19型画面のレコーダーATOMOS SUMOを発表しました。レコーダー部分の基本性能はSHOGUN INFERNOと同等だそうです。GoProはカメラとしては4K対応のHERO5が既に登場していましたが、ドローンが正式に再生産になりました。ドローンで有名なDJIはRonin 2というカメラサポートを発表しました。すでにOSMOやRoninなどがありますが、Ronin 2はかなり大掛かりなものとなっています。
センターホールには見るべきブースが沢山あるのですが、そろそろサウスホールにもいってみようかと思います。サウスホールにはブラックマジックデザインが出展していてNABではいつも新製品を発表しています。REDもサウスホールなんですが、今年は出展していないそうです。REDが登場したときは個人でも所有できるデジタルシネマカメラということで、それ以来ずっとNABに出展していたんですが、最近は他社もデジタルシネマカメラをリーズナブルな価格で発売していて以前のようにREDのアドバンテージもなくなってきたということもあるのかもしれません。REDは独自のコミュニティサイトを立ち上げていて情報交換なんかも盛んにおこなわれていますので、NABのような機材展に出展しなくなったのかもしれませんね。
だいぶ駆け足でしたが、それでも沢山の新製品が出ていたのがお分かりいただけたかと思います。全体的に今年はもう4K8Kを各メーカーともにあまり前面に打ち出していないように見受けられました。その代りHDRがカメラでも編集機でも対応をうたっていました。ITU-R BT.2100規格により4K8KだけでなくHDにもHDRが適用できるようになったことが大きいと思います。放送の現場ではカラーグレーディングなんかやってられないという現場もあるので、そうした作業を行わなくてもHDR対応で撮影できたり編集できるソリューションが各社の目玉だったといえそうです。この後は、個々のブースをもう少し詳しく見ていきたいと思います。
ビデキンちゃんレビュー ~Zunow 0.8倍 4K対応ワイドコンバージョンレンズ WFK-95X~
昨年2月にレポートしたZunowさんのWFK-95の後継機モデルWFK-95Xが登場しました。WFK-95Xはマイクロフォーサーズセンサーと超広角24mmの両方に対応したほか、光学系をリファインしたことで、周辺解像度がアップしています。さらに、AG-DVX200のFHDモードでの光学式手ブレ補正機構. OIS(Optical Image Stabilizer)使用時のケラレを解消しているそうです。標準付属品として72mmと67mmの2個のアダプターリング(ご使用の際はどちらかを必ずつける必要があります)とセットスクリュー用のドライバー、ポーチ、角形ラバーフードが付属しています。
前回はパナソニックさんの赤いカメラAG-DVX200と組み合わせてレポートしましたが、今回はパナソニックさんのAG-UX180に装着して試用してみました。このカメラのフィルター口径は67mmなので、67mmのアダプターリングをワイコンに装着します。一般的なアダプターリングはフィルターなどを装着するのと同じで、ねじ込むだけですがこれだとワイコンを外すときにアダプターリングがカメラ側に残ってしまって、ちょっとイラっとすることがありますが、このワイコンに付属のアダプターリングには固定用の小さなネジがあってワイコン側にきちんと固定できるようになっています。ただ、固定用のネジは非常に小さなネジなので、緩めすぎて外してしまい行方不明にならないように注意が必要ですね。専用のスクリュードライバーも付属していますので、別途ドライバーを購入する必要はありません。
AG-UX180のワイド側は35mmカメラ換算でUHD/FHD時24.5mm、4K時24mmなので、0.8倍のWFK-95Xを装着すると20.3mmおよび19.2mmになります。かなりの広角になりますね。ショートズームレンズに匹敵するといってもいいかもしれません。AG-UX180のようにレンズ交換できないカメラでも超広角レンズを使った広い範囲の撮影ができます。もちろんズーム全域で使えるので常用することも可能です。では、早速撮影してみましょう。0.8倍ですが、かなりのワイド感がありますね。
広角20mmというと歪曲が気になるところです。実際のところどの程度なんでしょうか。物理的に超広角レンズの場合歪曲と周辺光量の低下は避けられないと言われています。ただし周辺光量の低下は専用レンズの場合カメラ側で補正していることがありますので、最近のカメラではあまり気にならなくなっています。
カメラレンズに装着するワイコンは口径が大きいこともありますが、ゴーストやフレアが発生してしまうことがあります。今回はあいにく晴天ではなかったのですが、逆光になるように撮影してみました。前回のワイコンのレビューの時と同様オリジナルのレンズと遜色ありませんでした。ゴーストやフレアはレンズ面の反射で発生することもありますが、レンズの周辺部分の反射で発生することもあります。最近のレンズは普通レンズコーティングが施されていますので、レンズの周囲での反射には要注意ですね。
広角から望遠までフルレンジで使えるワイコンでは、広角時の描写に問題なくても望遠時に色にじみが発生してしまうことがよくあります。カメラレンズに対してワイコンを装着することで、光学性能が落ちてしまうんですね。それと二線ボケなどカメラ側で補正していることもありますが、ワイコン装着時のことまではカバーしてくれません。建物のエッジ部分や電線などを撮影するとよくわかる現象なので、高圧線を撮影してみました。これもワイコン無しと区別がつきません。ワイコン自体の光学性のはかなり優秀だと思います。
ワイコン装着時の利点は画角が広くなるのはもちろんですが、最短撮影距離も短くすることができます。AG-UX180の最短撮影距離は約1mです。小型ビデオカメラでは、室内など引きの取れないところで撮影することも多いので、もう一歩寄りたいところです。WFK-95Xを装着すると65cmまで寄ることができるようになります。狭い室内などではありがたいですね。ちょうど梅が咲いていたので撮影してみました。
WFK-95Xは72mmと67mmの2個のアダプターリングが付属していますので、今回使用したAG-UX180だけでなくAG-DVX200やAG-160A/130A、AJ-PX270、AG-UX90などにも装着可能です。4K解像度でも周辺まで解像度の低下もなく、フレアやゴーストも出ないので、常用してもいいですし、色々使いまわしすることができますね。